2023年5月22日を前に、私の今考えていることをまとめようと思って、これを書いています。
別に誰かに届けたいとか、読んでほしいとか、そういうことは思っていません。
ただの私の取り留めのない、辻褄すら合っていない覚書のようなものです。
それでもよければお付き合いください。
じぐへ
神宮寺勇太さん。
あなたはいつからか「ジン」と呼ばれるようになりました。
最初にそう呼んだのはいったい誰なのでしょうか。
機会があれば教えてほしいけど、やっぱり教えてほしくないです。
それは、私の中には別の「ジン」がいるからです。
その人は、輝くばかりの才能にあふれた人です。
なにをやらせても100点、いやそれ以上の点数を叩き出す、まごうことない天才です。
なのに、どこかおバカで、抜けていて、でも不思議とカリスマで、みんなに愛される人です。
胸を張ってこの人が自軍の最強だと、今でもそう言える人です。
ですが、彼がいなくなったのは突然のことでした。
海の向こうのエージェントが、彼にアメリカでライブをしないかと誘いました。
彼は悩みましたが、当時の社長とメンバーに背中を押され、メンバーがワールドビッグツアーを挙行する中、ひとりアメリカへ旅立ちました。
日本に残ったメンバーが迎えたツアー初日、会場には社長がいました。
そして、ライブを見た彼は、「ジン」をグループから外すことを決め、アメリカでの音楽活動に専念させることにしました。
私は、彼らが5人になった後からのファンです。
だから、6人の彼らのことは、過去に発売されたものの中でしか見ることができませんでした。
過去にやったライブ、過去に放送されたテレビ番組、過去に発売された雑誌。
どれをとっても、彼は正直に自分自身について語っているように見えたし、そのパフォーマンスに嘘はないように思えました。
アメリカで成功したい、でもグループのことも大切に思っている。
メンバーは、スタッフは、ファンは、この相反する思いについて、どのように感じたのでしょう。
私は、この一連の事実を、このすべてが終わってから知ることになったので、これらについて語ることはできません。
ですが、今回は違いました。
彼らの相反する思いが理解されることはなかったのでしょう。
なぜ彼らは辞めるのか、その理由を尋ねてきた人たちに対して、そう語ることができてしまいました。
話は変わりますが、私は、アイドルとは「アイドル」という人種のことを指すと思っています。
大勢の人から愛とお金をもらって、その対価として自分を見せる、そんな人種です。
プライベートは、「自分」がより魅力的になるように切り取らなければいけないし、恋愛や火遊びは御法度、結婚なんてもっての外。
演技仕事や音楽活動で数字を出さなければ外野から貶され、ライブではどんなことがあってもどんなうちわを見ても笑顔でパフォーマンスをしなければならない。
その道には、プロがいます。
例えば、歌のプロなら歌手だし、ダンスのプロならダンサーだし、演技のプロなら俳優です。
ではアイドルとは、何のプロなのでしょうか。
私は、疑似恋愛の相手のプロだと思っています。
ジャニーズとは、直接会えない代わりに安いホスト。
私は、ジャニーズアイドルのことをよくこう表現します。
ホストの客である私には、あなたのような人種の大変さ、やりがい、魅力を理解することは一生かかってもできないことなのだと思います。
それは、私が「アイドル」という人種ではないから。
でも、それはあなたも同じことで、あなたに「ファン」「オタク」という人種のことを理解することはできないと思います。
それは、あなたが「ファン」「オタク」という人種ではないから。
私たちは、互いに互いを理解することはできません。
ああなんじゃないか、こうなんじゃないか。
そう推測することしかできません。
なぜなら、与える側と与えられる側、与えられる側と与える側では見える景色が違うから。
ライブ会場に行くと、まず私たちが目にするのは大掛かりなセットと巨大なスクリーンです。
ですが、あなたたちが最初に目にするものは、ペンライトとうちわで埋まった満員の会場です。
よく、「アイドルも人だから」と理由づけされます。
アイドルも人だから恋愛していい、結婚していい。
一見優しそうでアイドル思いで、優等生でお手本のようなファンに見えますが、私からすると「していい」とは随分と上から目線な表現に感じます。
アイドルも人間なら、なぜ恋愛すること、結婚することに対してファンから許可を得なければならないのでしょう。
逆に、ここで「すべき」と言えないのが、私たちファンの性なのかもしれません。
逆に、あなたたちアイドルは、私たちファンに、あなたたちではない他の人と恋愛してほしいと思いますか。
結婚してほしいと思いますか。
ここで、私たちファンと同じように、あなたたちアイドルも「すべき」とまでは言えないのですか。
もしそうなのだとしたら、ここで一個アイドルとファンとの間に共通点が見つかったことになります。
ここまでいろいろと述べましたが、結局ファンにはアイドルのことはわからないし、アイドルにもファンのことはわからないのだと思います。
ですが、私があなたたちについて知っていることがひとつだけあります。
それは、あなたたちが本当のことを言うことがないということです。
ですが、あなたたちが本当のことを言わないように、ファンも本当のことを表立って言うことはありません。
お互いがお互いを思って嘘をついて、それでうまく回っている。
私は、それならそれでいいと言える人間でありたかったです。
私は、あれからずっと考えていました。
なぜあなたが辞めようと思ったのか。
結局、答えが出ることはなく、先ほどのように取ってつけた、誰にでもわかるようなことを答えとするしかありませんでした。
私の知っているじぐは、ずっと明るくて、笑顔で、優しくて、ファン思いで、メンバー思いでした。
私は、あなたがKing & Princeとしてデビューしたことに対して、嬉しさと共に驚きがありました。
天才たちの中で、あなたにはデビューに値する才能がないように思えたからです。
私は、キンプリのことを天才の集団だと捉えています。
ダンスの天才がいれば、演技の天才も、歌の天才も、努力の天才も、キャラクター性の天才もいます。
私の忘れられない「ジン」は、歌の天才でした。
彼の属した集団もまた天才の集団でした。
演技の天才、歌の天才、ダンスの天才、ラップの天才、キャラクター性の天才、努力の天才。
天才同士が互いを刺激し合い、彼らはいつのまにか天下を取ることができました。
ですが、天才だからこそわかり合えない部分、ぶつかり合うことも多かったようです。
そんな彼らにとてもよく似ているあなたたちは、彼らとは違って、きちんと(という言い方はあれですが)仲がいいように見えました。
もちろん彼らが実際にはとても仲の良い集団ということは知っていますが、それはそうとしてあなたたちはとても仲が良いと感じることが多かった印象があります。
それは、あなたの存在が大きかったのでしょう。
あなたは、誰にでも分け隔てなく接することができる人なのではないかと思っています。
天才は、他の天才とぶつかることに忙しいです。
才能のないあなただからこそ、一昔前の就活生が連呼していたような潤滑油になれたのではないでしょうか。
いや、それこそがあなたの才能なのかもしれません。
人と人をつなげることができる、これがあなたに神が与えた才能なのかも。
そう思うに足る出来事が多すぎます。
私は、あなたがKing & Princeのメンバーとしてデビューできたことを誇りに思っています。
ですが、このキンプリというグループに課せられた使命は重すぎて、あなたたちのような天才集団にはある種碇のように思えたのかもしれません。
私は、ジャニーズ事務所に所属するアイドルグループのオリジナルは、Hey!Say!JUMPが最後だと思っています。
それ以降のグループは、全部それ以前のグループの焼き増しです。
なぜなら、JUMP以降のグループは、「憧れの誰か」がいることが当たり前で、その誰かというモデルロールに沿うことが正解だから。
私は、King & Princeというグループの本質は、KAT-TUNと同じだと捉えています。
「敵無し 不可能も無し とばすぜ 燃え上がれ本能」*1
こう歌ったKAT-TUNと、
「未知なる道へと限界突破」*2
こう歌ったあなたたちと、その心意気はとてもよく似ています。
私の視点から見ると、あなたたちがバックについていたSexy Zoneを親として、祖父母から隔世遺伝しているようでした。
だから、KAT-TUNと同じような道を辿ることを知った時、ああ、歴史は繰り返すのだなと、そう思いました。
私の個人的な夢、願望は、KAT-TUNが6人でアメリカに行くことでした。
その夢が叶うことはありませんでした。
ですが、あなたたちなら、あんなに仲がいいあなたたちならできると思っていました。
私は、あの日、私は自分の夢のやり直しをしていたに過ぎないのだと思いました。
ですが、絶対にわかりあえないと思っていたあなたたちと、一瞬でも同じ夢を共有して同じ夢を見れたこと、それは私にとってはじぐと、あなたの大好きな才能あるメンバーとだからできた、すごく大きな、夢のある、夢のような出来事でした。
大好きなじぐ、あなたはずっとこの事務所で生きていってくれると思っていました。
40歳になったら、ファンにパンチパーマ姿を見せてくれると思っていました。
ずっと、この事務所で夢を語ってくれると思っていました。
最後の1人になろうと、King & Princeの名を背負うのは、あなただと思っていました。
ですが、結局、どこまでいってもあなたはアイドルで、私はファンでした。
でも、もし来世があるのなら、私はまたアイドルのあなたと、あなたのファンとして巡り会いたいです。
私が知る限り、じぐ、あなたは最も人を幸せにすることに長けたアイドルでした。
今まで本当にありがとうございました。
ほしより
追記
「幸せがよく似合うひと」、2021年7月発売の「Re:Sense」に収録されているのでご興味のある方はぜひ!